抄録
我々はイネ変異体を用いてジベレリン(GA)シグナル伝達の解明を目指している。今までに、GAシグナル伝達の抑制因子であるSLR1が、SCFGID2複合体を介してGA依存的に分解されることを明らかにした。さらに、F-box機能欠失変異体gid2において、リン酸化SLR1 (SLR1-P) がGA依存的に蓄積すること、DEAEカラムで分離したSLR1-Pが特異的にGID2と結合することから、SLR1のGA依存的リン酸化が分解の引き金になる可能性を提案した。今回は、SLR1のリン酸化部位を特定するとともに、上記の仮説の是非について考察した。
32Pでin vivoラベルしたSLR1の分析からセリンがリン酸化されること、形質転換体の解析からリン酸化部位は、polyS/T/VとDELLAおよび(もしくは)TVHYNP領域に複数存在していることが解った。一方、1.gid2におけるSLR1-Pの蓄積は、GAによるSLR1の転写活性化に起因する 2.GA生合成変異体でもSLR1-Pは存在する 3.リン酸化阻害剤はSLR1の分解を阻害できない 4. DEAE分画後SLR1-PをCIAP処理してもGID2に対する結合能は維持される、等の結果から、SLR1のリン酸化はGA依存的分解に必須ではないと結論した。ただし、4.の結果からリン酸化以外の修飾もしくは、立体構造変化の重要性を考えている。本研究の一部は、生研機構の支援で行われた。