抄録
Phenylalanine ammonia-lyase (PAL) は一次代謝系から二次代謝系へと導入する初発の酵素であり、二次代謝系の流れを左右する律速酵素として重要である。ニンジン培養細胞系においてニンジン PAL 遺伝子 (gDcPAL1) の発現は希釈効果、エリシター、UV-B などにより誘導されることが明らかにされている。またそのプロモーター領域にはフェニルプロパノイドおよびフラボノイド合成系酵素群のプロモーター上流に広く存在する box-L と類似する配列 (box-L1~box-L5) が存在し、なかでも box-L1、box-L5 がその発現制御に大きく関与していることが明らかにされている。我々は gDcPAL1 のプロモーター上に存在する box-L1、box-L5 に結合する転写調節因子 DcMYB1 を単離し、その機能解析を行ってきた。トランジェントアッセイによる解析の結果、DcMYB1 による gDcPAL1 プロモーターの活性化には複数存在する box-L が必要であること、また、UV-B、希釈効果、エリシターといったストレスによる gDcPAL1 プロモーターの活性化には DcMYB1 の発現が必要であり、DcMYB1 が gDcPAL1 の発現を直接制御している転写調節因子であることが示唆された。