抄録
cDNAマイクロアレイを用いて低リン条件に強く発現が誘導される遺伝子をスクリーニングした結果、これまでに全長375 bpからなる機能未知遺伝子OsPI1 (Oryza sativa Phosphate-limitation Inducible gene 1)を単離した。本研究はOsPI1遺伝子の機能を解析することを目的とする。OsPI1の発現はリン欠乏で非常に迅速に全身的に誘導された。その発現の特徴は、その他の特徴も類似するTPSI1/Mt4 familyと一致した。リン欠乏状態のイネを用いてin situ hybridizationを行った結果、よりリンを強く要求する若い組織においてOsPI1の強い発現が確認された。配列上の特徴とin vitro translationの結果から、OsPI1はポリペプチドをコードせずRNAのまま生体内で機能を果たしている可能性が示唆された。以上より、OsPI1遺伝子は他のリン酸欠乏応答遺伝子の発現制御に関与することによってリン酸欠乏適応機構において重要な役割を果たしている可能性が推測された。現在、RNAiによるOsPI1遺伝子の発現抑制系統を作成しており、リン欠乏条件下でのOsPI1遺伝子の発現抑制の影響についての知見についても発表する。