抄録
イネのゲノムの配列解析が完成しつつあり、配列情報に基づく遺伝子ターゲティングは極めて有効な逆遺伝学法であり、遺伝子ノックアウトのみならず、遺伝子の機能モチーフを改変した変異イネ作出も可能となろう。我々は、イネで強力なポジティブ・ネガティブ選抜法を基本としたターゲティング法を澱粉合成に関わる Waxy遺伝子を標的モデルとして開発し、次いで本ターゲティング法の汎用性を確めるため、第11染色体短腕に約30kbの間隔で順方向に2コピー存在するアルコール脱水素酵素遺伝子 (Alcohol dehydrogenase ) Adh1と Adh2のターゲティングを進めてきた。すでに Adh1と Adh2の両遺伝子について、相同組換えが生じた数系統のターゲット・イネ(T0)を得て、サザン解析の結果を2004年の本大会で報告した。 Adh2については、さらに系統数を増やすことができたので、再生世代(T0)と次世代(T1)の詳しいサザン解析について報告する。これまでの解析結果から、 Waxyのターゲティングに匹敵するする頻度と精度で相同組換えイネが得られたと考えられる。また、 Waxy 遺伝子ターゲティングでは見られなかった組換えの特徴がいくつか見出されたので、T-DNAの組換えを考慮したイネでの相同組換えの過程について考察する。さらに、 Adh1ターゲティングについても表現型に関する結果を得たので報告する。