抄録
木本植物は、伸長成長停止後の茎も木部にあて材を形成することで姿勢制御している。双子葉植物は主に屈曲したい側に引張あて材を形成し、その強い引張の成長応力によって茎を曲げるが、引張応力を発生するメカニズムについては未だ明らかにされていない。一方、木本植物の樹幹の水ポテンシャルは、昼夜における蒸散と吸水のバランス変化により、樹幹直径を変動させるほどの力がある。この力が引張あて材の強い成長応力発生要因であると仮定し、温度を一定に保った植物培養装置内で引張あて材形成中の供試植物(Populus alba)に対して種々の実験をおこなった。あて材形成は育成ポットごと水平に倒すことで誘導した。樹幹上に位置目標となる標的を数個接着、固定したデジタルカメラを培養装置内に設置し、一定間隔で自動的に画像を記録、得られたデジタル画像上の標的位置を読み取ることによって角度を測定し、引張あて材形成による屈曲の形態変化を、経時的にプロットした。この方法では、屈曲レートやパターン等に昼夜の間で大きな差異は見られなかった。その後、ひずみゲージを用いた形態の変動を測定した結果、傾斜上側の軸方向にだけ特徴的な変動パターンが見られた。