抄録
Auroraキナーゼは細胞分裂を制御するセリン・トレオニンキナーゼで生物種を超えて高度に保存されている。動物のAuroraキナーゼは, 中心体の成熟や紡錘体形成に関わるAurora-Aキナーゼ, 染色体の整列や分離および細胞質分裂を制御するAurora-Bキナーゼ,そしてAurora-Cキナーゼの3種に分類されている。植物のAuroraキナーゼを解析するために, Arabidopsis thalianaから3個のAuroraキナーゼ遺伝子を同定しAtAUR1, AtAUR2, AtAUR3と命名した。キナーゼドメインにおいてAtAUR1はAtAUR2と95%, ATAUR3と63%の相同性があった。3種類のAtAUR はin vitroでヒストンH3のセリン10をリン酸化した。次にGFP融合タンパク質を発現するタバコBY-2細胞株を作成して動態解析を行った。AtAUR1とAtAUR2は前中期から後期に紡錘体上に局在し, 終期には核膜に局在した。このほかに, AtAUR1のみが終期の細胞板に局在が見られた。AtAUR3は染色体凝縮の進行とともに, 核内に点状の局在を示し,中期には赤道面上に並列した。後期には分離した娘染色体全体に局在が観察された。以上の動態解析の結果から, AtAUR1とAtAUR2は紡錘体形成, AtAUR1は細胞板形成, AtAUR3は動原体形成に関与していることが示唆された。