抄録
シアノバクテリアSynechococcus sp. PCC 7942株に同定された3つのDnaK蛋白質(DnaK1, DnaK2, DnaK3 )は必須性や細胞内の局在性の違いからそれぞれが特異的な機能を担っている事が示唆されている。
昨年度の本大会ではこれらのdnaK 相同遺伝子のうちdnaK2 の発現量のみが、熱、強光、塩(NaCl)ストレスに対して一過的に増加した事、さらにdnaK2 の転写開始点から予想されるプロモーター配列は大腸菌のσ70やσ32に認識される配列とは異なっていた事を報告した。また、複数のシアノバクテリアの株においてdnaK2 を含む一部の熱ショック遺伝子の上流に保存されている配列がある事を示した。本大会ではdnaK2 遺伝子の上流について、より詳細な解析を行ったので報告する。
dnaK2 の発現調節領域を同定する目的でdnaK2 上流領域とレポーター遺伝子を転写融合させ活性を測定したところ、上流に存在するorfとの間の領域のみでは熱、強光による発現誘導が見られなかったが、dnaK2 の開始コドンより下流120bpまで含めた結果、熱による発現誘導が見られた。またこの誘導は上述した保存配列を除く事で全く見られなくなった。これらの事から、dnaK2 のストレス応答には自身の構造遺伝子領域と上流の保存配列の両方が重要であると考えられた。一方で上流のorf内部も発現調節に関与している可能性が示唆された。