抄録
HtpGは原核生物におけるHsp90のホモログである。Hsp90は真核生物においてシグナル伝達や変異の潜在化など重要な働きを担っていることが知られている。シアノバクテリアSynechococcus sp. PCC7942においてHtpGは熱、強光、酸化、鉄欠乏のストレスに応答すること、またhtpG破壊株のフィコシアニンやクロロフィル量が野生株に比べ減少することを示してきた。しかしHtpGの分子機能については不明な点が多い。
我々はHtpGをBaitとした酵母2ハイブリッドスクリーニングを行い、HemE (ウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼ)との特異的相互作用を見出した。ポルフィリン生合成酵素であるHemEは原核生物から高等真核生物まで広く保存されており、特にシアノバクテリアではヘム、クロロフィル合成経路とビタミンB12合成経路の分岐点にあたる反応を触媒する重要な鍵酵素である。HtpGによるHemEの酵素活性への影響を調べるため、HemEの基質であるウロポルフィリノーゲンに野生株、またはhtpG破壊株の細胞抽出液を添加して、基質の減少量を比較した。その結果、htpG破壊株のHemE活性は増加し、HtpGがHemE活性に対して負に作用することが示唆された。強光時におけるHtpGの発現と、そのHemE活性への影響をさらに詳しく解析中である。