抄録
ABI3遺伝子とその相同遺伝子は胚発生初期から発現する転写制御因子として知られている。我々はこれまでに、C-ABI3 (Carrot-ABI3) のプロモーター解析を行い、胚特異的発現を制御する10 bpのプロモーターシス配列Carrot Embryonic Element 1(CEE1)を決定し、それにAP2/ERFファミリーの転写制御因子が結合することを示してきた。さらに、ABI3遺伝子についてもプロモーター上の二つのCEE1逆配列を含む約150 bpの領域(Atd3-1L1)が種子胚における遺伝子発現を誘導するのに十分であることを確認してきた。今回は、このAtd3-1L1領域について変異導入コンストラクトを用いた詳細な解析を行い、二つのCEE1逆配列のうちAEE1-1と名付けた配列が胚での遺伝子発現に不可欠であることを見いだした。一方、OsVP1プロモーター上のCEE1様配列(OsEE1)についても、ゲルシフト法により、CEE1結合因子との結合性を確認した。CEE1、AEE1-1、OsEE1の配列比較、AEE1-1に変異を導入したコンストラクトを導入した形質転換体の解析、および、一塩基置換時の転写制御因子との結合性の解析などを行った結果に基づき、Embryonic Element 1コア配列 (EE1) を決定した。EE1はさまざまな植物の胚において遺伝子発現に関与していることが予想される。
また、Atd3-1L1領域のAEE1-1領域に変異を導入した実験において、レポーター遺伝子の発現パターンに変化が見られることが判明した。現在、さらに詳細な解析を行っている。