抄録
これまで光周性花成において接木伝達性を持つ「花成刺激物質」の存在が示唆されてきた。「花成刺激物質」は葉で産生され、篩管を通って輸送され、茎頂で花芽形成を引き起こすと考えられている。しかし、これまでに「花成刺激物質」の物質的な同定は報告されていない。
長日植物シロイヌナズナのFTは、花成経路統合遺伝子の一つであり、主に光周期に依存した花成促進に寄与する。FT遺伝子はPEBP/RKIPファミリーに属する約20kDaの蛋白質をコードする。FTは芽生えの子葉、本葉の篩部で発現することが報告されている。FTによる花成促進には、茎頂で発現しbZIP蛋白質をコードするFD遺伝子が必要である。一方、FDによる花成促進にもFT機能が必要である。これらからFT蛋白質の作用部位は茎頂であると考えられる。
以上をふまえて、FTによる花成促進効果の接木伝達性を調べることにした。用いた胚軸接木法は、4日目の芽生えを使い、胚軸に一部切れ込みを入れた台木に、胚軸で切断した接穂を差し込むことで、両者の茎頂をY字型に残す接木法である。接木面の樹脂切片を作製し、維管束を観察することで接木が成立していることを確認した。花成遅延変異体ft-1の台木にFT過剰発現体を接木し、ft同士の接木を対照として比較したところ、台木の花成促進が確認された。同様に野生型を接木した場合について検討している。得られた結果について報告する。