2020 年 26 巻 1 号 p. 22-28
食道静脈瘤は主として粘膜固有層浅部,粘膜固有層深部,粘膜下層の3層を走行する静脈の拡張により形成されている.またその血流は胃体上部粘膜血流と門脈系血流の両者から供給され,門脈系血流の流入量が増加することにより食道静脈瘤の形態も増大している.食道静脈瘤に対する内視鏡的治療は様々であるが,理論的には5%EOI=EISは太い供血路塞栓に適しており,1%AS-EIS,EVL,APCは柵状血管処理に適している.5%EOI=EISは透視下の血管内注入を基本とし,EVISで治療範囲を判断,静脈瘤および供血路の塞栓を目指す.1%AS-EISは透視設備不要で血管内外注入可能であり,静脈瘤の色調と粘膜の状態で注入量を判断する.EVLは静脈瘤本体を結紮し,1条につき複数個の結紮を行うが,将来の再発防止を兼ねて柵状血管最下端部を含めて結紮することが重要となる.過去32年間に当施設で内視鏡的治療を行った食道静脈瘤923例を検討対象としたところ,食道静脈瘤症例の長期予後は基礎疾患の状態,予防的治療,治療経過中の出血により規定されていた.