抄録
鉄硫黄クラスター(Fe-S)はフェレドキシンや光化学系1の電子受容体成分である。大腸菌E. coliや窒素固定細菌A. vinelandiiなどの研究からFe-Sのアポタンパク質へのアッセンブリにはIscSやIscUなどの因子が関与しており、これらの因子の機能解析が進んでいる。このうち、IscSは、遊離のシステインをアラニンに分解し、その際に生じる元素状の硫黄を使ってFe-Sがアポタンパク質内でアッセンブルされるというモデルが提唱されている。また、IscUはFe-Sアッセンブルの際のスカフォルド(足場)として働くと考えられている。IscSとIscUをコードする遺伝子は大腸菌や窒素固定細菌ばかりでなく、植物、動物を含む多くの生物種から報告されている。緑色硫黄細菌Chlorobium tepidumはFe-S型光化学反応中心を持つ光合成細菌で、ニトロゲナーゼなどの窒素固定に関与するnif遺伝子群も有する。これまで研究されてきたA. vinelandiiなど多くの生物種にはiscSとiscUのホモログがそれぞれ複数個存在するのとは対照的に、C. tepidumの全ゲノム中にはiscSとiscUはそれぞれ1コピーしか存在しない。今回、我々は、C. tepidumにおけるFe-Sアッセンブル過程を明らかにするために、C. tepidumの iscSとiscUをそれぞれ大腸菌内で大量発現させ、その機能と性質を調べた。