抄録
種子の発芽過程では多くの遺伝子発現が誘導される。したがってこの機構では、遺伝子発現に関与する様々な転写調節因子が重要な機能を果たしているはずである。しかしながら、これまでに報告されている発芽種子のプロテオーム解析では、このような転写調節因子を検出した例は少ない。転写調節因子はその発現量が極めて微量であるため、存在比率の高いタンパク質の影響を受けて検出されにくいことが予想される。転写調節因子のようなDNAに親和性を持つタンパク質は、DNAアフィニティーカラムクロマトグラフィーで効率よく分画できる。そこで本研究では、発芽時に重要な役割を果たす転写調節因子を明らかにすることを目的として、イネ発芽種子の粗抽出液をDNAアフィニティーカラムクロマトグラフィーでPrefractionationし、吸水後に変動するタンパク質を二次元電気泳動で解析した。その結果、(i)42kDa ( p42 )、40kDa ( p40 )、38kDa ( p38 )のDNA結合タンパク質が吸水3日目までに著しく減少すること、(ii)これら3つのタンパク質は胚以外の組織に存在していることが明らかになった。また、p42、p40、及びp38の急激な減少は、無胚半切種子を吸水させた場合にも観察されたことから、これらの減少には胚に由来する因子は関与しないことが示唆された。