抄録
バーナリゼーションはDNA脱メチル化によるエピジェネティクス制御を受ける顕著な例である。光周的花成でも、シソではエピジェネティクス制御が関与する可能性を我々はすでに指摘した。シソの花成にDNA脱メチル化が関与するであろうと推測したのは、花成状態が長期間持続するというシソの特異な性質が、バーナリゼーションでの低温効果の持続性と類似するからであった。そこで、今回は、数種の植物を用いて、花成状態の持続特性とDNA脱メチル化による花成誘導との間に相関があるかどうかを検討した。
花成研究の代表的な材料である4種の植物に対して誘導的光周処理を行った後、非誘導条件に移して、花成反応の推移を調べた。その結果、アサガオ、アオウキクサは栄養生長に戻り、ムシトリナデシコとオナモミは生殖生長を続けた。これらの種に5-azacytidine(azaC)を処理したところ、ムシトリナデシコだけが花成を誘導された。オナモミは花成状態が長く持続するが、azaCで花成は誘導されなかった。以上の結果から、長期にわたる花成状態の持続にDNA脱メチル化が関与するというモデルは常に成立するわけではないことが示唆された。花成状態が持続する種であっても、シソ・ムシトリナデシコとオナモミでは、花成制御機構が異なる可能性がある。rDNAスペーサ領域のサザン解析によるDNAメチル化度の検討を含めて、この点について議論する。