抄録
RDD1は植物の転写因子Dof遺伝子と有意な類似性を示し、イネにおいて恒常暗期条件下でも転写量が約24時間周期で変動する遺伝子の1つとして同定された。今回はRDD1の機能解析の結果について報告する。既知の概日リズム制御下遺伝子の発現調節への関与について調べるために、RDD1 cDNAを大量発現用プロモーター下流にセンス方向(S)もしくはアンチセンス方向(AS)につないで作出した形質転換イネ(Sイネ, ASイネ)を用いて発現解析を行った。解析の結果、光合成関連遺伝子Cab1RとrbcSの転写量の変動パターンが形質転換イネで変化していて、長日条件下と短日条件下では異なる変化を示すことがわかった。また、内在性RDD1 mRNAと相補的なRNAの存在が示されたことから、アンチセンスRNAがRDD1の発現調節に関与している可能性が考えられた。形質転換イネの草丈は野生型よりもやや低く、ASイネはS イネよりも低かった。出穂日はSイネと野生型がほぼ同じであったが、ASイネは平均で約10日の遅延がみられた。以上の結果から、RDD1は光合成関連遺伝子の転写量調節に関わる転写因子の1つであると推定され、光合成関連遺伝子の発現調節を介してイネの生長や出穂期に影響を与えているのかもしれない。