抄録
ゲノム解析の結果見出された多数の遺伝子の機能を効率良く同定する方法として、生育条件の均一化が容易な懸濁培養細胞中でそれらの遺伝子を強制発現させ、形質転換体の表現型を解析することが考えられる。しかしながら、通常は三角フラスコ等を細胞培養容器として用いているため、このような解析のために必要な多種の形質転換体の培養には、多量の三角フラスコやシェーカー等の多大な設備投資が必要となり、また、細胞の継代に多大な労力を要することとなる。
そこで我々は、タバコ培養細胞BY-2株をモデル細胞として、小スケール・小スペースで、多数の細胞株を培養できる系の開発を行った。そのために解決するべき課題として、細胞がダメージを受けないスピードで十分な通気条件を保ちながら震盪できること、懸濁培養として自動ピペッターで継代可能であること、他の多検体解析系との組合せが簡単にできること、の三点を検討の対象にした。これらの要求を満たす培養方法として、培養容器として96穴深底プレートを用い、ガス交換可能なシートでプレートをシールし、新規に開発した卓上サイズのローテーターを用いて攪拌するという方法を確立した。この方法を用いることにより、BY-2細胞を、週1回継代しながら6週間に渡り安定して細胞が増殖する条件で培養できることを確認した。現在、この方法が他の細胞にも適用できるか、イネ培養細胞Oc株を用いて検討中である。