抄録
植物体の成長に伴う表現型の変化を長期間に渡り網羅的かつハイスループットに記録する目的で、植物生育イメージングシステムを開発している。イネフィトクロム変異体の生育を、本システムにより時系列画像として記録し、新しい葉が出現する時間周期(新出周期)や伸長速度を計測した。長日条件(14hLight30°C/10hDark25°C)の場合、日本晴(WT)では主稈第5葉から第11葉の新出周期はほぼ一定の値を示し、平均84±4.5 hだった。フィトクロムA( phyA )変異体はWTより約12 h短い新出周期を示した。一方、フィトクロムB( phyB )変異体は、第7葉目まではWTとほぼ同じ値を示したが、第8葉以降は平均127.2±19.2 hと新出周期が長くなる傾向が見られた。葉の伸長速度は、新出開始後約2日間はWTでは約110mm/dayの最高速度を示し、以降の伸長速度は緩やかになった。新出葉の最高伸長速度は phyA 変異体では、WTとほぼ同等であった。一方 phyB 変異体はWTの約半分の速度で伸長した(約60mm/day)。以上の結果から、長日条件で生育する栄養成長期のイネにおいてphyAは葉の新出周期を遅らせ、phyBは葉の新出周期と伸長を早める調節に関与していることが示唆された。これらの表現型と出穂との関係について考察する。本研究は農水省プロジェクトSY1108及びIP1006の委託を受けて実施した。