抄録
哺乳類のNa+/胆汁酸輸送体(NBT)とアミノ酸レベルで高い相同性を持つ一群の機能未知遺伝子が、植物にも広く存在している。シロイヌナズナでNBTホモログの遺伝子は5つ、イネでは4つ存在する。そのサブファミリーの1つと思われるNBT1は、さまざまな植物の間でアミノ酸配列は極めて高い相同性を持っていた。このことは、このNBTホモログが植物において重要な役割を担っていることを示唆している。
一昨年本学会において我々は、通性多肉植物型酸代謝(CAM)植物アイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)にもNBTホモログ(McNBT1)が存在し、N端に葉緑体移行シグナルをもち8~10本の膜貫通領域をもつことが予想されること、さらに、CAM化によって葉でmRNAのレベルが上昇することを報告した。McNBT1の植物体内での役割について調べるために、McNBT1のORFを35 Sプロモーターと連結し、アグロバクテリウムを用いてタバコに導入した。野生型と比べて、生育や形態に大きな違いは見られなかったものの、半定量的RT-PCR法により、形質転換植物体の葉でMcNBT1のmRNAが検出できた。現在、McNBT1形質転換体の表現型についてさらに解析を進めている。また、酵母細胞での発現を目的として、McNBT1のORFをGAL 1プロモーターに連結したプラスミドを構築中である。