日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ラン藻 Nostoc punctiforme の硝酸・亜硝酸能動輸送体(NrtP)の性質
*愛知 真木子吉原 さおり山下 円永井 和夫小俣 達男
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p. 653

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抄録
ラン藻の主な窒素源である硝酸イオンは,能動輸送によって細胞内に取り込まれ,硝酸還元酵素,亜硝酸還元酵素によってアンモニアに還元されたのち同化される.淡水性ラン藻の多くがABC型の高親和性硝酸・亜硝酸能動輸送体(ABC-NRT)を持つのに対し,Nostoc punctiforme は,植物のNRT2と同じNNP(Nitrate-Nitrite Porter)ファミリーに属する硝酸・亜硝酸能動輸送体であるNrtPを持つことがゲノム解析により示されている。NrtPによる硝酸イオンと亜硝酸イオンの吸収のキネティクスを解析した結果、NrtPのKmは硝酸に対して約1μM、亜硝酸に対して約10μMであり、亜硝酸より硝酸に対しておよそ10倍の親和性を示すことがわかった。またNrtPはABC-NRTと異なり、アンモニア存在下でも活性が阻害されなかった。N. punctiforme の硝酸同化はアンモニアの培地への添加により阻害されたが、これは硝酸還元酵素(NR)の阻害によるものであった。以上の結果は、N. punctiforme がアンモニアを獲得した場合、硝酸還元は停止するものの硝酸イオンの吸収・蓄積は継続することを示唆しており、貧栄養条件下での無機窒素源の獲得戦略として注目される。
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© 2005 日本植物生理学会
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