抄録
湛水条件で生育しているイネは、窒素源として主にNH4+を利用している。生態型が異なる日本型イネNipponbareとインド型イネKasalathを、低及び高NH4+濃度で育成した。その結果、低NH4+濃度においては、Npponbareに比較して、Kasalathでは著しい根長の増加が認められた。一方、高NH4+濃度においては、Npponbareに比較して、Kasalathでは著しいNH4+障害を引き起こし、枯死に至った。本研究では、イネにおける窒素の吸収及び同化、さらに個体生育に直接的な影響を及ぼす遺伝子群の同定を目的とし、外来のNH4+濃度に応じて個体生育を支配しているQTLのマッピングを行った。
Nipponbare及びKasalathに由来する戻し交配系統群を、ガラス室内にて種子栄養が枯渇するまで水のみで育成した。その後、0.005, 0.05, 1, 25 及び40 mMのNH4+を含む水耕培地 (pH 5.5) にて一週間の処理を行った。NH4+処理前及び後に、地上部及び根の長さ並びに乾物重を計測した。それらの各形質の変化量に関してQTL解析を2回行った所、31個のQTLが検出された。それらのQTLの多くは、低及び高NH4+処理区で特異的に検出された。このことは、それらの遺伝子が特定のNH4+濃度域において個体生育に重要な機能を担っていることを示唆している。