抄録
植物は動物に比べ多様なトリテルペン(スクワレン由来の化合物)を産生する。スクワレンは細胞質のイソプレノイド合成経路であるメバロン酸経路で合成される直鎖状トリテルペンであり、その後ステロイドおよびトリテルペノイドに代謝される。HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)はメバロン酸経路の鍵酵素で、シロイヌナズナではHMG1, HMG2の2つの遺伝子によってコードされている。我々はこれまでにこれらの遺伝子のT-DNA挿入変異体を単離し、トリテルペンが細胞の伸長成長、老化の抑制、花粉の発達に重要に関わっていることを明らかにした。今回は、老化の抑制にどのような分子種がどのように関わっているのかについていくつかの知見が得られたので報告する。
HMGR、スクアレン合成酵素、スクアレンエポキシダーゼ、C-14レダクターゼ(FACKEL)、CYP90B1(DWF4)の阻害剤を野生型植物に処理し、マイクロアレイによって遺伝子発現の変動を無処理のhmg1変異体と比較した。さらに挙動の似ていたいくつかの遺伝子についてhmg1-1, smt1-3, fk-DCJ5, det2の各変異体での発現を比較した。その結果、老化にはスクアレンが関与することが強く示唆された。スクアレンは抗酸化剤として老化防止に役立っているのではないかと考えている。