抄録
イネの花序は腋芽形成パターンと新たに形成される腋芽の分化パターンによって決定される。我々はこれまでに遺伝学的手法で腋芽形成に重要なLAX遺伝子などを単離し、解析してきたが、腋芽形成を制御する遺伝子ネットワークの理解には、さらなる因子の同定が不可欠である。そこで、イネ花序分裂組織で特異的に発現する遺伝子を網羅的に単離・同定することを試みた。生殖成長期に移行後の茎頂を5つのステージにわけ、栄養成長期から生殖成長期への移行およびその後の花序形成に伴って発現が変化する遺伝子群をマイクロアレイによって同定した。この結果、22000個のうち358遺伝子において発現の変化が見られた。これらを発現時期のパターンにより分類したところ、19個が生殖成長移行直後から発現が上昇する遺伝子として同定された。in situ hybridizationにより、これらの遺伝子は花序において組織特異的な発現パターンを示すことが明らかになった。なかでもDOF family遺伝子は、LAX遺伝子とよく似た発現パターンを示した。さらにこのDOF family遺伝子の発現がlax変異体で減少していたことから、LAX遺伝子との関連が示唆された。以上の結果から、イネ花序形成に関与する遺伝子群の同定において、今回行なったマイクロアレイ解析は有効であった。