抄録
HAP複合体は真核生物に広く保存された複合体で、HAP2、HAP3、HAP5の3つのサブユニットからなる。各サブユニット遺伝子は動物、酵母では1個ずつであるのに対し、植物では10個前後の遺伝子が存在する。我々はイネのHAP3遺伝子に注目し、HAP複合体の多様性と各遺伝子および各複合体の機能の解明を通して、植物に多数のHAP遺伝子が存在する意義の理解を目指している。イネには10個のHAP2遺伝子、11個のHAP3遺伝子、9個のHAP5遺伝子が存在し、そのうち3つのHAP3遺伝子OsHAP3A、OsHAP3B、OsHAP3Cが葉緑体の発生と機能に関わっていることを明らかにした。今回、主に過剰発現体を用いたOsHAP3Eの機能解析とサブユニット間の相互作用の解析を行った。OsHAP3E過剰発現体は矮性で葉が直立し、また穂では頴花の密度が増大していた。マイクロアレイを行ったところ、ブラシノステロイド関連遺伝子とMADSボックス遺伝子の発現に影響がみられた。アンチセンス個体は植物体の高さがやや高くなった。OsHAP3Eは初期胚、茎頂、若い穂で発現しており、ブラシノステロイドや穂の発生に関わる機能を担っている可能性が考えられた。また、酵母two-hybrid系を用いた実験からHAP3とHAP5の相互作用には特異性があることがわかった。