抄録
雑種致死をおこすタバコ種間F1雑種(Nicotiana gossei x N. tabacum)由来の培養細胞GTH4は37℃から26℃に移すことで細胞死を起こす。我々は、温度遷移による致死反応を全く起こさなくなった変異細胞系GTH4SをGTH4より得た。GTH4SはGTH4が示す26℃での過酸化水素の一過的増大も起こさなかった。37℃においてGTH4にアクチノマイシンDを異なる時間処理すると、処理時間が長いほど26℃での細胞死がより強く抑制された。このことは26℃での細胞死が、37℃の培養期間中での新規RNA合成に依存することを示す。以上の知見は、GTH4で発現する致死原因遺伝子がGTH4Sでは発現していない可能性を示唆する。致死原因遺伝子を検索する目的で、37℃で培養したGTH4とGTH4SよりRNAを調整しDifferential display法により両細胞の発現遺伝子プロファイルを比較した。一次スクリーニングで差の見られた36のPCR増幅産物を再度二次スクリーニングで増幅した結果、再現性のある5クローンを得た。これらのクローンの配列情報をもとにプライマーを設計してRT-PCRにより両細胞での発現特異性を調べたところ、GTH4にのみに発現する1クローンを得た。このクローンの全長 cDNAを解析したところ、ユビキチンー接合酵素をコードする遺伝子であった。