抄録
我々は、アグロバクテリウム由来ipt遺伝子を過剰発現するイネの解析過程で、あるD型サイクリン遺伝子(以下OsCYCD)の発現上昇を見いだした。イネゲノム上には少なくとも8個のD型サイクリン遺伝子が存在するが、このOsCycD遺伝子の発現は、未分化状態のカルスではあまり高くなく、多芽体で多くの転写産物が検出されたことから、サイトカイニンに応答して働くことが予想された。しかし、非形質転換イネ培養細胞にBAを含む数種の植物ホルモンあるいは糖を与えても、その転写量の迅速な増加は見られなかった。そこで、OsCYCDの組織および時間特異的発現を詳細に観察するため、in situハイブリダイゼーション法や、OsYCDプロモーター::gus融合遺伝子を導入した形質転換植物を用いた解析を行った。その結果、このOsCYCD発現は葉原器形成予定域と維管束形成層の形成予定域で検出されることがわかった。このような発現パターンは細胞増殖に関与する遺伝子に共通して見いだされるものだが、OsCYCD発現は根端においては検出されなかった。またOsCYCD過剰発現植物では葉の形態に異常が見られた。以上の結果から、このOsCYCDは葉の形成に関連して働くサイクリンであることが示唆された。