抄録
脳は乾燥重量の約60%が脂質であり, 中でも, ドコサヘキサエン酸 (DHA) やアラキドン酸 (ARA) などの高度不飽和脂肪酸 (PUFA) が多く含まれている。これらは必須脂肪酸としても知られ, 乳児の脳の発育に重要とされ, また成人においても記憶力や認知症の改善, 統合失調症の症状緩和の効果があるなど, 注目されている。細胞質内ではこれらのPUFAは特異的に脂肪酸結合タンパク質 (Fabp) と結合し, 細胞膜へ輸送されたり遺伝子発現に関わる。本稿では, 神経生物・行動神経科学的な知見から, PUFAおよびFabpが, 脳の発生・発達および, 生後脳での神経新生への寄与について紹介する。