抄録
トリエン脂肪酸は植物の生体膜における主要構成要素であるとともに、病傷害ストレス応答における中枢的シグナル因子として知られるジャスモン酸の合成前駆体として、重要な生理的役割を担っている。植物が傷害ストレスを受けると、被傷害組織においてジャスモン酸が速やかに蓄積し、一連の病傷害抵抗性反応が誘起される。トリエン脂肪酸の生成を触媒するω-3デサチュラーゼをコードするシロイヌナズナのFAD7遺伝子は、傷害ストレスにともないその発現が顕著に上昇するが、この遺伝子の発現応答を規定する細胞内シグナル経路は組織に応じて異なることが示唆されている。すなわち、根における発現応答がジャスモン酸を介したシグナル経路に依存するのに対し、葉における発現はジャスモン酸に非依存的に誘導される。われわれはFAD7の傷害応答をつかさどる根および葉に特異的なシグナル経路の構成要素を明らかにするために、FAD7プロモーターとホタルルシフェラーゼ遺伝子の融合コンストラクト(FAD7-LUC)を導入した形質転換植物を利用し、傷害依存的な生物発光におよぼす各種突然変異(ジャスモン酸、サリチル酸、エチレンの生合成およびシグナル経路にかかわるもの)の影響を解析した。また、FAD7-LUC導入植物に由来するM2集団から単離した機能欠損および機能獲得型の新規突然変異体について、FAD7およびその他の傷害応答性遺伝子の発現解析を行った。