日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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日本植物生理学会奨励賞
高等植物の細胞周期におけるG2/M期転写制御機構
*伊藤 正樹
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p. A2

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抄録
植物細胞の増殖制御の機構を明らかにすることは、植物の発生過程を理解する上で不可欠である。植物体における細胞増殖の制御は、最終的にはサイクリンなどの細胞周期制御因子を介した個々の細胞の細胞周期制御に起因すると考えられる。私たちは、培養細胞を用いた単純な系を利用し、サイクリンの転写を制御する仕組みを研究してきた。タバコ培養細胞BY2の同調培養系を用いた一連の研究により、サイクリンB遺伝子の転写がG2期後期からM期に特異的に起こること、この周期依存的な転写にはMSAエレメントと名づけたシス配列が必要かつ十分であること、MSAエレメントは様々なG2/M期制御因子の転写に共通に関わっていることを明らかにしてきた。MSAエレメントに結合し転写制御を司る因子は三回の繰り返し構造をもつタイプのMyb(3RMyb)であった。これらには転写活性化因子としてはたらくMybと競合的な抑制因子として働くMybがあり、それらのバランスの変化によりG2/M期転写が実現しているという仮説を提唱している。現在、5個存在するシロイヌナズナの3RMyb遺伝子を逆遺伝学的に解析している。3RMybの遺伝子破壊株は細胞質分裂、核分裂、分裂面決定などのG2/M期に起こる事象の異常が原因と考えられる表現型を示した。培養系を用いた分子生物学で明らかにしてきたG2/M期転写制御機構が遺伝学的にも正しいことが明らかになってきた。
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© 2005 日本植物生理学会
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