日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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日本植物生理学会奨励賞
硫酸イオン輸送系の生理機能と制御に関する研究
*高橋 秀樹
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p. A3

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抄録
硫黄はアミノ酸、タンパク質、脂質などの一次代謝産物を構成する必須元素であり主に硫酸イオンとして根から吸収される。植物における窒素、硫黄、リンなどの主要栄養元素の吸収と輸送は、異なった特性、機能を持つ複数のイオントランスポーターの組織・細胞・オルガネラレベルでの空間的配置により高度に制御されている。演者らはシロイヌナズナのゲノム上に存在する12種の硫酸イオントランスポーター(SULTR)について分子生理学的な解析を行い、硫酸イオンの吸収及び器官間輸送の制御に関わるSULTR分子種の生理機能を解明した。(1)高親和型硫酸イオントランスポーターSULTR1;1、SULTR1;2が根の表皮、皮層、根毛に局在し、硫黄欠乏による硫酸イオン吸収活性の増加に寄与することを明らかにした。(2)低親和型硫酸イオントランスポーターSULTR2;1がSULTR3;5と協調的に機能し、根維管束組織において地上部への硫酸イオン輸送の調節を行うことを明らかにした。(3)SULTR4;1、SULTR4;2が根の内鞘細胞、木部柔細胞の液胞に局在し、液胞からの硫酸イオンの排出を調節することを証明した。(4)篩部伴細胞に局在するSULTR1;3はシンク器官への硫黄転流に機能する高親和型硫酸イオントランスポーターであった。本講演では、植物個体レベルでの硫酸イオン輸送の諸過程について述べるともに、硫黄同化制御で鍵となるSULTR1;1及びSULTR1;2のmRNA発現制御、活性調節機構についても最近の知見を紹介する。
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© 2005 日本植物生理学会
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