抄録
Nod factor受容後に根毛で誘導されるカルシウムスパイキング(Ca spiking)は、共生成立における重要な初期応答反応と位置付けられている。common signaling pathwayに異常をきたす変異体の一部でCa spikingが誘導されないことから、初期応答反応の軸であるCa spikingはcommon signaling pathwayによる制御を受けていると考えられる。
ミヤコグサ変異体Ljsym71及びLjsym86から同定された、CASTOR及びPOLLUX遺伝子は、プラスチド局在型イオンチャネル様タンパク質をコードしている。相互に高い相同性を示しながら、一方の遺伝子変異によりCa spikingが誘導されないことから、CASTOR及びPOLLUXタンパク質はCa spiking上流に位置し、プラスチド・細胞質間でのイオン流出入を介してCa spikingの起動を制御していると考えられる。
Ca spikingは起こるものの、共生が成立しないMtdmi3及びLjsym15/72変異体より同定されたMtDMI3/LjCCaMK遺伝子は、カルシウム・カルモデュリン依存型プロテインキナーゼCCaMKをコードしていた。CCaMKは、Ca spiking下流に位置すると推測され、Ca spikingによるカルシウム濃度変動に依存して自己リン酸化し、それに伴うキナーゼ活性の上昇により、下流の情報伝達因子をリン酸化し、根粒菌・菌根菌の細胞内共生成立に至るシグナルカスケードを活性化しているものと考えられる。