抄録
近年、マメ科植物の根粒形成変異体の解析から、根粒菌および菌根菌のどちらとの共生にも必要な遺伝子の存在が明らかになってきた。そのような変異体の1つであるLjsym30に根粒菌を感染させたとき、皮層細胞の分裂は観察されたが、それが成熟根粒にまで発達しなかった。また、根粒菌はカーリングした根毛に付着してコロナイズしていた。しかし、感染糸の形成は阻害されており、根毛内に根粒菌が侵入できなかった。一方、菌根菌を感染させると、内生菌糸は皮層に侵入していたが、樹枝状体が形成されにくく、形成されても早期に老化した。このように、LjSYM30はcommon signaling pathwayの最終段階に存在し、根粒菌や菌根菌が細胞内に侵入するために必要な遺伝子であると推定された。そこで、実際にポジショナルクローニングによって遺伝子の同定を行った。LjSYM30は推定アミノ酸配列で518アミノ酸残基をコードしており、機能既知のドメインを含まない新規遺伝子だった。LjSYM30の上流約3.5kbpを用いて、プロモーターGUS解析を行なったところ、皮層の分裂が起こっている領域でGUS活性が見られた。また、根粒においても活性が見られた。LjSYM30:GFPをタバコのBY-2細胞で発現させたところ、融合タンパク質が核に局在していることが示唆された。このような結果より、LjSYM30の機能を考察する。