抄録
紅色細菌の光合成電子伝達系において光酸化された反応中心複合体に対する電子供与体として可溶性チトクロムc2が良く知られている。我々はβグループの紅色細菌Rubrivivax gelatinosusにおいては可溶性の鉄-イオウタンパクであるHiPIPが主にその機能を担っていることを欠損株の作成を通じて明らかにしてきた。さらにR. gelatinosusではHiPIP以外にも酸化還元電位の異なる2つの可溶性チトクロムc8が反応中心への補助的な電子供与体として働くことも示してきた。R. gelatinosusにおける光合成電子伝達経路の全容を明らかにするために、これら3種類の電子供与体遺伝子の様々な多重欠損株を作成したところ、全てを除去した3重欠損株も光合成による生育が可能であった。この3重欠損株生細胞に対する閃光照射実験で新たに553 nmにピークを持つチトクロムの光酸化が観察された。そのチトクロムを精製したところ約25 kDaの分子量を持つC型チトクロムで、膜標品との再構成実験を行うと反応中心への良い電子供与体として働いた。N末端のアミノ酸配列に基づいて遺伝子のクローニングを行い、全配列を決定したところ、C型ヘムの結合モチーフが2つあり、相同性検索ではチトクロムc4に最も似ていた。現在この新規チトクロムの遺伝子破壊株を作成し、機能をさらに詳しく調べている。