日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナのCTP:ホスホリルエタノールアミンシチジリルトランスフェラーゼは細胞の増殖および正常な分化過程に必要である
*溝井 順哉西田 生郎
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p. 037

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抄録

シロイヌナズナのPHOSPHORYLETHANOLAMINE CYTIDYLYLTRANSFERASE 1 (PECT1)は,ホスファチジルエタノールアミン(PE)の主要な生合成経路であるCDP-エタノールアミン経路の鍵酵素をコードする遺伝子である.我々はPECT1の弱い変異アリルであるpect1-4とヌルアリルであるpect1-6の交配によってpect1-4/pect1-6 F1植物を作出した.この植物では,野生型に比べてPE含量が低下し,ロゼットや花茎の矮小化や花器官の発達異常がみられた.また,ロゼット葉では細胞数,細胞体積および細胞間隙の減少がみられ,花茎では髄の軽微な細胞伸長阻害と,垂直方向の細胞数の大きな減少がみられた.また,pect1-4/pect1-6 F1植物では,根端の分裂領域の範囲が狭くなっていることがわかった.さらに,ProPECT1:PECT1-EYFP:TerNOS融合遺伝子の発現は,あらゆる組織で認められたが,細胞増殖の盛んな領域で特に強かった.以上の結果から,細胞増殖におけるPECT1の機能の重要性が示唆された.一方,花茎やロゼット葉での細胞伸長の阻害や・細胞間隙の減少,花器官の異常は,細胞分裂以外のプロセス,例えば膜の分泌などに異常があるためと推察された.したがって,PECT1は,細胞の増殖・分化を通して正常な個体発生に寄与していることが示唆される.

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© 2006 日本植物生理学会
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