抄録
葉緑体は、構成するタンパク質の多くが核にコードされている。我々はシロイヌナズナの核コード葉緑体タンパク質の機能解析を目的に、葉緑体タンパク質変異体の大規模収集を行った。本研究で対象にした葉緑体タンパク質は、代表的な4つの予想プログラムで葉緑体に移行すると予想された 2,090 個とした。我々は、理研、NASC、Wisconsin、CSHL のトランスポゾンタグラインおよび SALK の T-DNA タグラインの中から葉緑体タンパク質を破壊したと考えられる 3,416 ラインを収集し、収集したタグラインからホモラインプールの作製を行っている。704 ラインの理研の Ds タグラインのホモライン化の過程で、アルビノまたは pale-green 変異体 (apg 変異体) や形態形成異常変異体が 55 ライン得られた。重複を除いた 33 個の Ds 挿入遺伝子が、表現型異常の原因遺伝子であることを明らかにするために、アレルの有無を調べた。 33 個の遺伝子の内、24 個は複数の変異体アレルが存在しており、その内 17 個が同じ表現型を示した。このことから、少なくとも 17 個の Ds 挿入遺伝子は、表現型異常の原因遺伝子であり、葉緑体形成に重要な遺伝子であると考えられた。今後、これらの葉緑体形成に重要な遺伝子の単離と共に、表現型に明らかな異常が見られないホモラインを用いた各種ストレスのスクリーニングを行い、ストレス関連の葉緑体タンパク質の機能を明らかにしていく予定である。