抄録
AtBI-1(Arabidopsis thaliana Bax Inhibitor-1)の過剰発現は、過酸化水素、サリチル酸等により引き起こされる細胞死を抑制することから、酸化ストレスに対する応答に関与していると考えられる。本因子は7回膜貫通領域を有する小胞体膜タンパク質で、C末端領域はcoiled-coil構造を形成していると推測されている。このC末端領域の14アミノ酸を欠損させたAtBI-1タンパク質は細胞死抑制因子としての活性を失うことから、この領域がAtBI-1の機能に重要であることが明らかとなった。近年、細胞死の制御には細胞内カルシウム濃度の変化が重要であると指摘されている。本研究ではAtBI-1がオオムギのカルモデュリン(CaM)と相互作用することを酵母のSplit-ubiquitin systemを用いて発見した。さらに本研究ではAtBI-1とカルモデュリンとが直接的に結合することを明らかにした。シロイヌナズナのゲノムには16個のカルモデュリン(AtCaMs)が存在するが、Overlay assayにより少なくとも二つのカルモデュリン(AtCaM6とAtCaM7) がAtBI-1のC末端側14アミノ酸と結合することが示された。現在C末端領域に変異を導入したAtBI-1タンパク質とカルモデュリンの相互作用を調べており、それらの結果についても合わせて報告する。