抄録
初期の生育が非常に緩慢で、出荷までの栽培期間の長いシクラメンにはその生育途上で様々な障害が発生する。私達はこれまでに窒素過剰条件下で栽培されたシクラメンがフザリウム萎凋病に罹病しやすいこと、フザリウムの感染に伴うストレスに応じてシクラメンのポリアミン代謝も大きく変動することなどについて報告した。今回は、シクラメンの体内窒素成分と萎凋病の発生との関係について解析した。
フザリウム菌を接種した鉢植えシクラメンを慣行条件で長期間栽培した後で、塊茎部の汚染度と萎凋病の調査を行い、塊茎部の遊離アミノ酸を分析した。塊茎部の汚染が認められない健全株に比べて罹病株では明らかに遊離アミノ酸含量が高く、中でもグルタミンやアスパラギン、アルギニンが萎凋病の発生と関係した。これらのアミノ酸はいずれもフザリウム菌の増殖活性を刺激した。また、萎凋病の発生を助長する高アンモニア処理が地下部にグルタミンの蓄積をもたらすこと、15N-標識グルタミン酸を経根吸収させると、塊茎部のグルタミンに高い15Nの取り込みが認められることなどから、高アンモニア条件では根で合成されたグルタミンが通導組織を経て塊茎部や地上部に移行されるものと推定された。窒素過剰条件下でのグルタミンの生成やアンモニアの解毒代謝に関連するアスパラギン、アルギニンの生成およびそれらの導管内部への集積がフザリウム萎凋病を助長する大きな要因と考えられる。