抄録
ソルガムは乾燥など劣悪な生育環境でも健全に生育する食用・飼料用作物である。この植物はバイオマスが大きいこと、収穫が容易であることなどから、カドミウム(Cd)汚染土壌の修復のための供試植物として近年注目されている。ソルガムによるCd汚染土壌の浄化の実用化には植物が根から吸収したCdを地上部に効率的に移行させる必要がある。本研究では、ソルガムにおけるCdの地上部への輸送機構の解明を目指し、様々な品種(4品種)のソルガムを用いて、そのCd吸収・移行特性を調べた。また、Cdの吸収・移行特性が異なる2つの品種を用いて、PETIS (positron emitting tracer imaging system) 法により、植物体内におけるCdの移行の差異をリアルタイムで可視化することを試みた。
異なる4品種のソルガムを約1ヶ月間水耕栽培し、0.1µMの濃度でCd処理を行った。今回の栽培条件は各品種の生育量に影響を及ぼさなかった。一方、各品種のCd蓄積量には最大で約3倍の差が見られた。これらの植物から、導管液を採取し、導管液中のCd濃度を調べたところ、その濃度にも地上におけるCdの蓄積量に応じた差異が存在することが確認できた。本研究の結果より、ソルガムでは地上部に高濃度のCdを蓄積する品種は導管を通じてのCdの輸送が低蓄積品種に比べて、積極的に行われていることが確認できた。