レギュラトリーサイエンス学会誌
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原著
日本で承認された新薬におけるヒト初回投与試験の開始用量に関する研究
八木 遥成川 衛
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2022 年 12 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

新薬の開発において,ヒト初回投与量(FHD)の設定は慎重に行う必要があるが,その時点で参考にできる情報は非常に限定的である.本研究では,日本で2009年から2018年に承認された新薬について,反復投与毒性試験の無毒性量(NOAEL)にもとづくヒト等価用量(HED)を算出し,FHD設定時の安全係数を評価した.また,クリアランス(CL)にもとづく方法によるHEDも算出し,両手法によるHEDと承認用量の関係について分析した.本研究で算出された安全係数は,多くの薬剤において,米国食品医薬品局(FDA)によるガイダンスで推奨されている安全係数10よりも大きな値をとり,過去に実施されたヒト初回投与試験における開始用量は非常に慎重に決定されたことが示唆された.また,多くの薬剤において,NOAELまたはCLのいずれにもとづくHEDであっても,それに安全係数10を適用することで算出される初回用量は承認用量よりも低用量であり,多くの場合,HEDに対して安全係数10を適用することで,承認用量よりも低いFHDを設定することが可能であることが示された.

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© 2022 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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