抄録
低リン酸環境におかれた植物は、さまざまな生理反応によりリン欠乏に対処することが知られている。中でも老化器官(ソース)から若年器官(シンク)へのリン酸転流は、リン酸欠乏に対する重要な適応機構の一つである。しかし、これまでのところ、その機構の詳細は未知の部分が多い。そこで、分子レベルにおけるリン酸転流機構の解析を目標に、モデル植物であるシロイヌナズナを材料として、リン酸転流現象の生理機構と転流に関与する遺伝子の探索を行った。
私たちは、シロイヌナズナにおけるリン酸転流現象を確認するため、リン酸濃度の異なる水耕培地で生育させた植物体について、葉組織中のリン酸含量変化、個体内のリン酸分配を解析しソース葉とシンク葉を決定した。それぞれの葉から単離したRNAを用いて、マイクロアレイによる発現解析を行い、リン酸転流への特異的関与が示唆される遺伝子を複数見いだした(2004年度年会)。その後、再度マイクロアレイ解析を行い、リン酸転流に関与する遺伝子の探索を進めるとともに、リアルタイムPCRを用いて個々の遺伝子の発現量を確認中である。さらに、発現変化が見られた遺伝子について、T-DNA挿入変異体を用いた生理解析から、リン酸転流への特異的関与の可能性を検討中なので、それらについて報告する。