抄録
シロイヌナズナのSAMにおいては、CLAVATA(CLV)およびWUSCHEL(WUS)の細胞間コミュニケーションを介して互いの発現調節により、分裂組織の機能維持がなされている。しかしながら、これら遺伝子の転写制御の実体はまだ不明な点が多い。
我々はSAMの機能維持に関わる機構に着目し、シロイヌナズナのT-DNA挿入ラインから生育途中でSAMの機能が停止する劣性変異体(shoot-apical-meristem arrest 1:sha1)を単離した。shaでは第8葉まで正常な形成及び抽出が見られるが、それ以降の葉と花序は形成されなかった。その結果として、シュート形成が完全に停止した表現型を示した。第8葉形成時におけるshaのSAMドーム構造は帯化を呈し、新たな葉原基の形成は認められなかった。奇妙なことに機能が停止したSAMの周辺から異所的な分裂組織の形成が観察され、最終的には帯化した花序が形成された。またshaではCLV1、CLV2およびSTMの発現が正常であったのに対し、WUSおよびCLV3の発現が著しく抑制された。更にTAIL-PCR法を行った結果、T‐DNAの挿入箇所はRINGフィンガーモチーフをもった新規タンパク質(SHA)をコードする遺伝子の5’上流領域に確認され、shaではこの遺伝子の発現量の低下が確認された。以上の結果から、SHAタンパク質の機能はWUSの転写促進に関与するものと推測され、sha変異体ではWUSの発現異常によってSAMの機能異常が引き起こされたものと考えられた。