抄録
CRES-T法は,転写因子を転写抑制因子(キメラリプレッサー)に変換して植物体に導入することでドミナントにその機能を抑制する技法である.シロイヌナズナのAGAMOUSキメラリプレッサー(AG-SRDX)を導入した組換えトレニア(1069-51)において興味深い花の形態変化が見られたので,組織レベルでの観察および遺伝子レベルでの解析を行った.
AG-SRDXを導入したシロイヌナズナは八重咲きの表現型となるが,1069-51系統では花弁数の増加は起こらず,花弁周縁の鋸歯の発生による花形変化を示した.これは,花芽にサイトカイニンを投与した場合に観察される形態変化(西島,2004)と類似している.しかし,花弁の維管束の配置が不規則であり,雌ずいの維管束組織が異所的にかつ集中して形成される点でサイトカイニン投与とは異なっていた.1069-51系統の花芽にサイトカイニンを投与したところ,開花時の花弁周縁に覆輪およびより鋭い鋸歯が発生し,雌ずいでは維管束組織の増加が確認された.野生型との交配後代では,花弁周縁の鋸歯が形成されず,雌ずいの維管束組織の増加のみが観察された.1069-51系統では,サイトカイニンによって制御される花弁の形態形成に関わる遺伝子にも影響を与えている可能性が示唆された.
そこで,発現解析や野生型との交配実験等を踏まえ,観察された形態変化と導入したAG-SRDXの効果との関係について考察する.