日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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代謝プロファイリングによるステロール側鎖不飽和化酵素(CYP710A)の同定と機能解析
*森川 智美水谷 正治青木 望渡辺 文太嵯峨 寛久斎藤 茂樹及川 彰鈴木 秀幸櫻井 望柴田 大輔和田野 晃坂田 完三太田 大策
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p. 462

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抄録
側鎖C-22不飽和結合を持つステロールは真核微生物(エルゴステロール)および植物(スチグマステロール,ブラシカステロール)に存在する.真核微生物における側鎖不飽和化反応はシトクロムP450 (CYP61)が触媒するが,高等植物のステロール側鎖不飽和化酵素遺伝子は不明である.まずCYP61と植物P450のタンパク質構造比較によってステロール生合成への関与が推定される植物P450候補を同定し,それらのcDNAをシロイヌナズナ植物体で恒常的に発現させた.続いて,ステロール組成変化のプロファイリングによって,シロイヌナズナの4種のCYP710A遺伝子(At710A1-At710A4)及びトマトCYP710A11遺伝子が当該反応に関与する可能性を明らかにした.At710A1及びSe710A11の過剰発現体ではスチグマステロール,At710A2過剰発現体ではスチグマステロールとブラシカステロールの両方の顕著な蓄積が見られた.プロモーター:GUS遺伝子発現解析によって,シロイヌナズナにおいてCYP710A遺伝子は厳密な組織特異的発現制御下にあることが示され,発育段階特異的なステロールの関与が示唆された.酵素活性は昆虫細胞発現系にて作製した組換え酵素タンパク質とT-DNA挿入変異体の解析によって確認した.以上の結果によって,これまで不明であった植物膜ステロール生合成の最終段階が解明された.
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© 2006 日本植物生理学会
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