抄録
これまでの研究で、シロイヌナズナにおいてはヌクレオソームのない局所的にオープンな領域であるDNase I高感受性部位(DNase I hypersensitive site; DNase I HS)がコンピテントな(発現している、もしくは誘導可能)遺伝子プロモーターのシス配列近傍に存在していること、また、インコンピテントな(発現しておらず、かつ誘導されない)遺伝子プロモーターには存在しないことを明らかにした。
今回新たに、ヒストンの修飾状態と転写活性化、発現のコンピテンシーとの関係を理解するためクロマチン免疫沈降法による解析を行った。 まず、熱誘導性のHSP18.2遺伝子の転写不活性・活性化状態におけるプロモーター周辺のクロマチン構造を解析したところ、不活性な状態でDNase I HSはシス配列のすぐ上流に形成されており、活性化に伴いヒストンのアセチル化レベルが増加すること、DNase I HSの下流のヌクレオソーム構造が破壊されシス配列と転写開始点を含む領域がオープンになることが明らかとなった。この結果から、DNase I HSはクロマチン修飾酵素(リモデリング因子やヒストンアセチル化酵素)が接近可能な“足場”として機能していることが示唆された。転写制御におけるDNase I高感受性部位の存在と転写因子の結合およびヒストンの修飾状態の変化について議論する予定である。