抄録
心理学研究においてアナグラム課題は,成功・失敗や認知的負荷といった独立変数の操作,認知処理能力や課題努力といった従属変数の測定など,幅広い用途で用いられている。本研究の目的は,アナグラム課題の困難度に関わる要因を明らかにすることと,心理学実験に利用可能なアナグラム課題のデータベースを作成することであった。19名の大学生が,清音ひらがな5文字のアナグラム課題147問に取り組んだ。困難度の指標として,課題解決に要する時間および主観的困難度を測定し,答えとなる単語の語彙特性として,熟知価,心像性,感情価を測定し,両者の関連を検討した。結果,困難度指標と語彙特性との間に有意な相関関係が見られ,各語彙特性の評定値が高い問題ほど困難度が低くなる傾向が示された。語彙特性を考慮することでアナグラム課題の困難度を調整できると考えられる。