日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヘビノネゴザカルスにおけるファイトキレーチンの消長
宮野 義之*吉原 利一程島 裕貴庄子 和博島田 浩章後藤 文之
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p. 520

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抄録
我が国の代表的なCdハイパーアキュームレーターであるシダ植物「ヘビノネゴザ」からカルスを誘導し、Cdに対する反応をタバコカルスと比較した。100μMのカドミウム曝露下において、ヘビノネゴザは6週間後でも全く生育が低下しなかったのに対し、タバコはわずか1週間後でも有意に生育が低下した。このとき、それぞれ細胞内にほぼ同程度のカドミウムを蓄積していたが、その細胞内における分布を調べると、ヘビノネゴザでは蓄積したCdの90%以上が細胞壁に存在しているのに対して、タバコでは逆に60%以上が細胞内に存在していた。また、ヘビノネゴザはCdの存在下でも生育に必要な必須元素を十分量吸収できることが示されたが、タバコではFeの濃度が50%以下に低下しており、鉄欠乏の状態にあることが示された。さらに、一般的な植物でCdの毒性回避に重要な役割を果たしていると考えられているファイトキレーチン(PCs)の合成酵素遺伝子(PCS)の発現とPCsの定量を行ったところ、カドミウムの曝露によりタバコではPCSの発現とPCsの合成量が共に増加するのに対して、ヘビノネゴザではどちらもほとんど変化しなかった。このことから、ヘビノネゴザの必須元素のトランスポーターは標的元素に対して特異性が高く、Cdの取り込み率が低いか、あるいは一度取り込まれたCdを細胞外に排出する機構が存在するかのいずれかの可能性が考えられた。
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© 2006 日本植物生理学会
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