抄録
樹木の分子育種において、花芽形成は重要なターゲットの1つである。花芽形成のコントロールや遺伝子組換え樹木の花粉飛散など改変すべき点が数多く残されている。私たちはユーカリの花芽形成の改変を目標とし、花芽形成時に発現する遺伝子の解析を進めている。はじめにユーカリのつぼみからRNAを単離し、このRNAからcDNAライブラリーを作製した。MADS-box遺伝子は花芽形成時に働く転写因子として多くの植物から単離・同定されている。cDNAライブラリーの配列解析からユーカリの花芽形成時には少なくとも14のMADS-box遺伝子が発現していることが確認された。今回はおしべの形成に関わる因子として、これらMADS-box遺伝子のなかからシロイヌナズナAgamous (AG)遺伝子に相同性の高い遺伝子を検索し、3つのAgamous相同性遺伝子を見出し、それぞれEAGL1, EAGL2, EAGL3と名付けた。これら遺伝子の発現は、EAGL1とEAGL2がつぼみで強く発現しているのに対し、EAGL3の発現はEAGL1, EAGL2に比べて弱いものであった。現在おしべが他の器官に変化した(花粉ができない)ユーカリの作出にむけて、RNAiによるこれら遺伝子の発現抑制を行うための遺伝子を構築している。今後はこれらの遺伝子をユーカリに導入し、その効果を調べたいと考えている。