抄録
タバコ種間F1雑種、Nicotiana tabacum x N. africanaとN. gossei x N. tabacumは共に幼苗期に致死する。前者は後者よりも致死の進行が早いため、細胞死発現機構が両者で違うと考えられた。そこで、双方の培養細胞系(TAH5: tabacum/africana, GTH4: gossei/tabacum)を確立し、比較した。両細胞とも37℃での生存率は高いが、26℃では致死した。しかし、その速度はTAH5がGTH4よりも早く、幼苗での致死進行速度を反映していた。 26℃では両者ともオキシダティブバーストを起こすが、TAH5ではO2-がより強く発生し、GTH4ではH2O2が発生した。NADPH oxidaseの阻害剤であるDPIはTAH5の致死を抑制したがGTH4には充分な効果が見られなかった。他方、catalaseはGTH4の致死抑制には効果があったが、TAH5には効果がなかった。タンパク質リン酸化/脱リン酸化の阻害剤、Caイオンチャネルの阻害剤による実験から、TAH5はCaイオンが介在する、GTH4ではタンパク質リン酸化反応が介在するシグナル伝達系がそれぞれに主要な役割を果たすことが分かった。このことから、雑種致死は種により異なるシグナル伝達系を利用し、個別の致死パターンを形成すると考えられた。