抄録
タバコ種間F1雑種(Nicotiana gossei x N. tabacum)下胚軸由来の培養細胞(GTH4)は37℃で増殖し、26℃で致死する。細胞を26℃に移すとH202の一過的増大、SIPK(salicylic acid induced protein kinase)活性化がおこるが、これらはMEKの阻害剤であるU0126処理で抑制され、また細胞死の進行も遅れる。以上の事は、雑種致死にMAPKシグナル伝達系が関与することを示している。雑種致死におけるMAPKの役割をさらに特定するため、デキサメタゾン(DEX)誘導型のMEK活性型変異体(NtMEK2DD)と不活性型変異体(NtMEK2KR)のタバコを花粉親とし、これらをN. gosseiと交雑してF1雑種を作出し、さらにそこから培養細胞を得た(GTHDD、GTHKR)。対照区において両細胞はGTH4同様37℃で高い生存率を維持するが、26℃で致死する。他方、DEX処理すると細胞死はGTHDDでは進行したが、GTHKRでは抑制された。NtMEK2KRが過剰生産されたことによりMAPKのシグナル伝達がかく乱され、細胞死が抑制されたものと考えられた。