抄録
最近の研究から、サイトカイニン(CK)は、必要部位で合成される局所シグナルとしての役割に加え、維管束系を介して輸送される長距離シグナルとしての役割をも担うことが明らかになり、両者が協調的に働くことで植物個体全体として統制のとれた形態形成や代謝制御がなされていると考えられている。我々は、CKの主要な輸送形態であるヌクレオシド型CKの輸送体の同定を目指し、イネの4種類の平衡型ヌクレオシド輸送体(OsENT)の輸送特性を、酵母発現系を利用して検討した。その結果、OsENT2が、アデノシンやウリジンなどのヌクレオシドを輸送する傍ら、ヌクレオシド型CKであるイソペンテニルアデニンリボシド(Km=32 uM)やトランスゼアチンリボシド(Kmm=630 uM)を輸送することを明らかにした(Plant Physiol., 2005, 138, 196-206)。OsENT2遺伝子のプロモーター制御下でGUSを発現する形質転換体を観察したところ、発芽初期においては胚盤で、また植物体全体を通して維管束組織でGUSの染色が認められた。このことから、OsENT2は胚乳から胚へのヌクレオシドの取り込みや長距離輸送に関与していると推測された。現在我々は、OsENT2遺伝子についてレトロトランスポゾンTos17の挿入系統やRNAiによる発現抑制体を用いて表現型解析を行っている。それらの結果をもとに、OsENT2の生理的役割について考察する。