抄録
植物における硝酸イオン吸収は、根細胞膜上の硝酸トランスポーター(NRT)によって行われると考えられている。我々は、以前の大会において、抗体を用いた実験によりオオムギ高親和性NRT(HvNRT2)タンパク質が細胞膜に存在すること、HvNRT2はタンパク質レベルで活性制御されていることが強く示唆されると報告した。HvNRT2のタンパク質レベルでの活性制御機構に関しては、タンパク質リン酸化の可能性が指摘されている。HvNRT2タンパク質のC末端領域は、細胞質側に露出しており、この領域にはタンパク質リン酸化酵素の基質となりうる、セリン、スレオニン残基が存在する。今回、我々はHvNRT2タンパク質C末端領域のin vitroリン酸化の可能性について調査したので、報告する。
大腸菌に発現させたHvNRT2タンパク質を基質に用いて32Pの取り込み活性の有無を調査した。また、無窒素条件下で1週間生育したオオムギ幼植物、および10mM硝酸塩を供与した幼植物それぞれの根から、可溶性画分を調整し、それぞれを粗酵素液として用いた。その結果、HvNRT2タンパク質C末端断片は、オオムギ根の可溶性画分によってカルシウムイオンに強く依存してin vitroでリン酸化された。また、このリン酸化活性は硝酸塩による誘導性を示した。